2015年4月13日 仙台市
2015年3月14日、国連大学サステイナビリティ高等研究所は、環境省、IUCNとともに、第3回国連防災世界会議において、パブリック・フォーラム公式サイドイベント防災・減災・復興への生態系の活用〜 3.11 の経験を世界へ未来へを開催し、200名を超える参加者が出席しました。
海岸林や湿地などの生態系は、平時の生態系サービスを通じて地域の暮らしを支えるだけでなく、防災・減災機能の役割も果たしています。本シンポジウムでは、国内外の優良事例を紹介しながら、今後どのように生態系を活用した防災・減災・復興を主流化できるかについて議論しました。
開会挨拶で、望月義夫環境大臣と安倍昭恵内閣総理大臣夫人は、災害多発地域における生態系の果たす役割の重要性を指摘しました。望月大臣は、防災・減災機能を有する生態系を維持することの大切さを強調し、生態系の防災・減災への活用の主流化に向けた日本の貢献を紹介しました。安倍首相夫人は、日本人は本来自然と共生してきたと述べ、東日本大震災の被災地で建設が進む巨大な防潮堤について、環境への影響などを考慮しながら、その必要性を見直すべきだと呼びかけました。
国連大学の武内和彦上級副学長は、レジリエントな自然共生社会の構築には、生態系機能を活用した取組が重要であると指摘し、東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼大島における自然景観を活かした復興の取組や三陸復興国立公園創設をはじめとしたグリーン復興プロジェクトなど、生態系を活用したレジリエンス強化の事例を紹介しました。
インガー・アンダーセンIUCN事務局長は、2015年以降の防災・減災のアジェンダにおいて、自然を活用した解決策が推進されるべきだと協調しました。さらに、IUCNと環境省の協力により作成した、国立公園等の保護地域が防災・減災に果たす役割等をとりまとめた「保護地域を活用した防災・減災 - 実務者向けハンドブック」を公表しました。
基調講演に続き、生態系を活用した防災・減災・復興の優良事例紹介が行われました。ジェーン・マドウィック氏(国際湿地保全連合CEO)は、湿地を活用した防災・減災の取組を紹介し、副次的な便益をもたらす解決策であると強調しました。白幡昇一氏(気仙沼大島観光協会長)は、地域住民が震災前より高い防潮堤の建設に反対し、防災林など生態系による防御機能を活かしつつ、震災以前と同規模の防潮堤を再建することを選択した気仙沼大島の事例を紹介し、自然と共生した持続可能な復興の重要性を指摘しました。マーリン・メンドーサ氏(フィリピン環境天然資源省生態系管理班長)とクリストファー・ブリッグス氏(ラムサール条約事務局長)は、洪水や干ばつ等の被害軽減に湿地が果たす役割について発表し、急速に減少している湿地の管理、保全、再生が不可欠であると指摘しました。桂川裕樹氏(林野庁計画課長)は、日本における森林の防災・減災機能を高める取組や日本の持つ治山技術とその分野における国際協力について紹介しました。
シンポジウムの後半には、専門家によるパネルディスカッションが行われ、生態系を活用した防災・減災の推進に向けた課題や展望について活発な議論が展開されました。ディスカッションでは、自然を生かしたインフラへの企業の投資や地域住民の参画、学際的なアプローチ、生態系管理の視点を含めた気候変動適応の計画や防災・減災の計画の必要性が指摘されました。
本シンポジウムの報告書は、こちらからご覧いただけます。
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本国際シンポジウムは、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)の活動の一環として開催されました。