グローバルな持続可能な開発目標と地域課題をつなぐシンポジウムを開催

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  • 2015年2月4日     東京

    Photo: POST2015

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    2015年1月16日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は東京工業大学と共催で、環境研究総合推進費S-11・Beyond MDGs Japan一般公開シンポジウム 持続可能な開発目標(SDGs)とポスト2015年開発アジェンダ~国際論議の現状と実施へ向けた課題を開催しました。

    シンポジウムでは、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限である2015 年以降の国際開発目標として、MDGsで積み残された課題(ポストMDGs)および新たな課題に対応した持続可能な開発目標(SDGs)を統合したポスト2015年開発アジェンダに関する国内外での議論の最新動向についての報告を行い、2030年目標やターゲット、それらの進捗を図る指標のあり方を考えました。また、関連する国際・国内政策実施へ向けた課題を検討することで、科学および自治体・企業等との持続可能な連携のあり方についても議論されました。

    参議院議員であり東海大学教授の武見敬三氏は「ポストMDGs とグローバル・ガバナンス」と題した基調講演で、新たなSDGsの設定とその実施においては、ガバナンスが課題となると指摘しました。SDGs検討プロセスの特徴として、市民社会のさまざまなステークホルダーの参画により実施されてきたSDGsに関するオープン・ワーキング・グループを挙げ、参加型アプローチの主流化を歓迎しました。また、ポストMDGsに求められるのは「人間を中心にすえた発展である」とした上で、貧困や格差拡大等、持続可能な開発に関わる諸課題への対応には、人間を中心とした包摂的なアプローチである「人間の安全保障」の概念と、この概念がポスト2015年開発アジェンダに反映されることが重要であると述べました。

    続くS-11プロジェクトリーダーの蟹江憲史氏(UNU-IASシニアリサーチフェロー/東京工業大学大学院准教授)による報告では、SDGsの概要とその策定に向けた経緯、またSDGsが直面する課題について言及しました。これまでのSDGsをめぐる国際交渉の成果を踏まえ、今後目指すべき持続可能な開発に関する4つの課題として、1)統合目標の策定、2)SDGsのためのガバナンス、3)世界の中の日本の役割、4)SDGsの実施における科学やステークホルダーとの協働という点を挙げました。

    パネル討論1「ポスト2015年開発アジェンダへの示唆~科学からの声と政策」では、科学的知見の政策への反映に関して、パネリストより下記の点が指摘されました。

    • 政策への反映という点に関しては政策決定者および自治体、政策の実施という点では当該分野に積極的に取り組んでいる企業やNGO等との連携が重要。
    • 分野横断的な課題へ取り組んでいくためには、専門家と現実を体感している生活者が連携し、相互にリテラシーズを高めながらパートナーシップを構築していくことが重要。
    • グローバル目標を各レベルでの実施段階に移行させていくにあたっては、国際機関の役割が重要。
    • 目標設定と実施の間のギャップを埋めるための対策が重要。
    • SDGsの実施にあたり、生活者の視点に落とすことは重要であるが、グローバル目標からの移行を担うプレーヤーについて議論を深めることが必要。

    パネル討論2では、今後決定されるSDGsの実施をどうするのか、また日本国内でSDGsをどのように考えるべきかについて議論が行われ、パネリストより下記の点が指摘されました。

    • ポスト2015年開発アジェンダをどのように実施するのか(How)という点では、当該アジェンダの実施手段やフォローアップ・レビューにおけるグローバル・パートナーシップが重要。
    • SDGsの実施に向けて、特に途上国支援における、データ革命、人口増加の中での政策のイノベーション、福祉の向上(幸福度)が大切。
    • 自然や社会の変化に伴う問題(安全・安心・豊かさ・活力の喪失)に対応するためには、科学技術を基盤として「レジリエントな社会(確かな情報の共有、対応策のオプションと戦略的対応、情報に基づくガバナンスの確立、ネットワーキング)」を構築・維持していくことが重要。
    • SDGsのような国際枠組と地域課題を双方向でつなぐことが重要。