「里海再生に向けた地域社会ベースの取組とガバナンス」促進のためのシンポジウムを開催

, ,

ニュース
  • 2022年2月18日     オンライン

    2022年2月9日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、笹川平和財団海洋政策研究所(OPRI)、および日本環境省(MOEJ)と、里海再生に向けた地域コミュニティによる取組とガバナンスをテーマにしたオンライン・シンポジウムを開催しました。国連生態系回復の10年に関する一連のキャンペーンの皮切りとなった本シンポジウムでは、里海の沿岸生態系に焦点を当て、脆弱な沿岸生態系の回復や再生に関する研究や優良事例を紹介しました。

    開会挨拶として、角南篤笹川平和財団理事長は、本シンポジウムの目的は、生態系再生に向けた人々の意識を高め、取組への関与を促すことであると強調しました。UNU-IASの山口しのぶ所長は、UNU-IASが国連生態系回復の10年の公式パートナー機関として、生態系回復プロジェクトのためにこれまで構築してきた知見を基礎とするナレッジマネジメントと実地支援に尽力していると述べました。また、沿岸の管理や再生などの戦略的アプローチを通じて人と自然の持続可能な関係を促進するSATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)の取組との関連を強調しました。

    国連環境計画(UNEP)の八代真紀子氏は、「国連生態系回復の10年」の使命は、既存の再生への取組を強化および支援し、リオ条約の目的を実践し、SDGsを推進することであると概説しました。OPRIの前川美湖氏は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)と気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が作成した報告書について紹介し、エネルギーの利用可能性と消費の増加が生活の質を改善するだけでなく、気候変動にも寄与することが明らかになったと述べました。UNU-IASのイヴォーン・ユー研究員は、沿岸生態系が海洋生物に食糧とシェルターを提供するとともに、内陸の生態系とも相互に関連していることに触れ、その生物多様性にとっての重要性を強調しました。

    恩納村漁業協同組合の山城正已氏は、サンゴ礁を白化から再生するために沖縄県恩納村の漁業者が協力して行っている、健康なサンゴを植え付け、保護する取組について紹介しました。南三陸町自然環境活用センターの阿部拓三氏は、宮城県志津川湾にて、地域の子どもたちに外来種に関する教育を行い、里海の再生に貢献するよう実施されている保全・再生プロジェクトを紹介しました。

    Montespertoli Ancient Grains協会のグイド・グアランディ氏は、イタリアのオルベテッロのラグーンでの持続可能な漁業について発表し、獲った魚を需要があるまでラグーンで生かしておくことによって、乱獲を防ぎ、里海の再生に貢献していることを説明しました。フィリピン大学ロスバニョス校のディクソン・ゲバナ氏は、放棄された養殖場をマングローブ林に再生することにより、台風による洪水リスクを軽減したというフィリピンのアリータス地域の取組を紹介しました。UNU-IASの渡辺綱男シニアプログラムコーディネーターが司会を務めるパネルディスカッションでは、パネリストは、海洋生物多様性を保護し、気候変動を緩和するために、地域コミュニティと政府間の協力が重要であることを強調しました。また、海洋保全に関する子供たちへの教育プログラム、港の近くでの藻場づくり、水産業と協力したシースケープの管理など、日本政府が実施するさまざまなプロジェクトについて話し合いました。

    閉会の挨拶で、環境省自然環境局の奥田直久局長は、森、海、社会はつながっており、国連生態系回復の10年の使命を達成するためには、地域コミュニティにおける知識の共有と促進が必要不可欠であることを強調しました。

    本イベントの録画映像はこちらからご覧いただけます。