シンポジウム、2030アジェンダの実施に向けた科学と政策の協働の必要性を提案

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  • 2015年11月17日     東京

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    国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、2015年10月24日、公開シンポジウム持続可能な開発目標(SDGs)の実施に向けた科学と政策の協働を開催しました。

    シンポジウムでは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」とガバナンス構造などについて研究を行う科学者らが集い、SDGsのあり方や実施における科学と政策の恊働の役割などについての活発的な議論が交わされました。

    基調講演では、武内和彦国連大学上級副学長が開発と環境の関係を取り巻く国際情勢や環境の変化を説明し、長年見られた経済発展とその延長として扱われてきた環境問題の関係性が、近年では経済発展や開発を進めるうえで、将来世代のためにも環境資源の保全が必要であるという考え方にシフトしている点などをあげました。

    また、武内上級副学長は目標とターゲットの数が多すぎる、というSDGsに対し多く寄せられている批判に理解を示しつつも、その普遍性や、先進国と発展途上国の別なく実施できる事が期待できる点などを評価。実施に向けた課題として、このような目標に関心の薄い先進国の市民社会での認知度の向上や、目標がどのようにして実施されるかを知るプロセスを明確にする事の必要性などを指摘し、こういった課題に対する取り組みを行ううえで科学の果たせる役割は大きく、重要であると強調しました。

    続くパネルディスカッションでは、カール・フォルケ、ストックホルム大学ストックホルム・レジリエンス・センター設立者兼科学ディレクター、スウェーデン王立科学アカデミーベイエ生態経済学研究所所長が、大きな地球に住む小さな人間社会という考え方から、大きな人間社会が住む小さな地球という考えに変わってきている、人間が地球と人間の関係をどのように見るかの存在論的視点の変化を指摘。フォルケ氏は、新たに認知されるようになった人新世(anthropocene)の考え方やSDGsができた背景にはこのような視点の変化があると解説しました。

    24-oct-2015-seminar「2030アジェンダ」の進捗や達成度をどのように評価するかという点については、マリア・イワノワ、マサチューセッツ大学ボストン校ガバナンスとサステイナビリティセンター共同ディレクター、同大学准教授は、組織的な透明性のあるモニタリングおよび報告メカニズムの構築を進めることが必要であると述べ、科学などの領域の持つ知見と、政治や政策立案の分野をつなぐ新しい仕組みの必要性を訴えました。

    蟹江憲史、UNU-IASシニア・リサーチ・フェロー、慶應義塾大学政策・メディア研究科教授もイワノワ准教授の意見に同調すると同時に、SDGsの実施の手法に必要とされる科学的知見は、グローバル、そして地域や国レベルで今後行われる実施手法を幅広くシェアすることで、お互いにより多くの情報を共有し、深く学び理解できるであろうと付け加えました。

    シンポジウムは、武内上級副学長が国連大学として今後2030年開発アジェンダを進めるための研究を積極的に行い、貢献して行く決意を再確認し、閉会しました。