2023年5月19日 東京
国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の新たなイシューペーパー(英題:Integrated Approach for Well-being, Environmental Sustainability, and Just Transition)は、5月19日〜21日にかけて開催されるG7広島サミットに先立ち、G7首脳に対して他のG20首脳と緊密に連携し、SDGs、カーボンニュートラル、気候レジリエントな開発に向けた行動を再始動するよう呼びかけるとともに、科学的なエビデンスに基づき、財政、科学技術、ガバナンス、能力構築、教育に関する政策の推進に向けた統合的で包括的なアプローチについての提言をまとめています。
本出版物は、UNU-IASが共同議長を務めた、本稿『ウェルビーイング、地球環境の持続可能性、公正な移行』と同名のThink7(T7)Japanタスクフォースの成果物の一つです。本稿での提言は、2023年4月27日〜28日にかけて開催されたT7Japanサミットにて発表され、議論されました。
本稿の著者は、Think7(T7)タスクフォース2️の共同議長である3名、地球環境戦略研究機関 (IGES)の松下和夫 シニアフェロー、グローバル・ソリューション・イニシアチブの創業者兼社長であるデニス・スノワー氏、UNU-IASの山口しのぶ 所長です。協力著者には、UNU-IASの専門家である 竹本明生 プログラムヘッド、ウッパラット・コーワタナサクン コンサルタント、マヘスティ・オキタサリ コンサルタントが含まれます。
昨今の危機がSDGs、カーボンニュートラル、およびウェルビーイングへの取り組みの進展を妨げていることを踏まえ、本稿では、経済、エネルギー安全保障、グローバルヘルス、教育など、G7の優先事項を達成するためには、まず環境の持続可能性の確保が必要不可欠であると強調しています。また、ウクライナでの戦争に対して「化石燃料への依存を急速に減らすことで、この機会を世界中で拡大し続ける気候危機に取り組むための転換点と捉えるべきだ」と主張しています。
本イシューペーパーでは、世界が気候リスクの大幅な低減とSDGsを実現していくためにG7とG20が連携して脱炭素化、持続可能な食料システムと生物多様性保全政策の推進、レジリエンスと社会的保障の強化、公正な移行とウェルビーイングの測定、パートナーシップの強化、能力向上、教育、若者のエンパワーメントなど統合的な施策を実施すべきこと、またそのためにはG7による途上国への支援強化が必要であることを提言しています。
また、パリ協定の実施に向けて必要となる温室効果ガス排出量の計測などの実務能力を組織的に強化する必要性についても強調しています。UNU-IASは、2023年9月より大学院学位プログラムにおいて国連組織で初の取り組みとなるパリ協定専攻コースを開設し、パリ協定の実施を担うリーダーの育成を行います。
Think7(T7)は、シンクタンクによるG7の公式関連グループです。T7では国際的なシンクタンクの専門家がG7各国やパートナーとの議論を深めるべく、G7議長国との連携のもと、調査研究に根ざした政策提言を行っています。
UNU-IASは、T7のタスクフォース2「ウェルビーイング、地球環境の持続可能性、公正な移行」において、これらの間の相互関連課題についての研究を行い、政策提言を作成するなど中心的な役割を果たしました。