Think7 Japan サミットにてG7とG20の架け橋となる政策ソリューションを提示

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  • 2023年5月1日     東京

    2023年4月27日~28日、東京で開催されたT7 Japanサミットにおいて、国連大学は「危機への対応、持続可能な開発の加速―G7・G20間の協調を目指してー」というメインテーマのもと専門的な議論に参加し、G7広島サミットに向けた政策ソリューションの提供を行いました。本イベントでは、G7経済のグリーン化、グローバルサウスにおける開発と経済的発展への障壁、ジェンダーと成長、より良い未来のための科学とデジタル化など、グローバルな課題が取り上げられ、G7広島サミットおよびそれ以降の議論に資する提言をまとめたコミュニケが採択されました。

    国連大学(UNU)のチリツィ・マルワラ学長は特別講演を行い、グローバルノースとグローバルサウス間の格差を埋める橋渡しをすることの必要性を強調しました。また、開発途上国がいかにして持続可能で公平な形で経済を成長させながら、公正な方法で脱炭素化を実現できるか、検討するよう参加者たちに求めました。そして、気候変動対策への資金調達においてG7諸国が果たすべき役割について強調しました。

    東京でのT7サミットで講演するUNUのチリツィ・マルワラ学長

    社会的・環境的課題への取り組み

    UNU-IAS は、「ウェルビーイング、地球環境の持続可能性、公正な移行」に関する T7 タスクフォースにおいて共同議長を務め、これらの相互に関連する課題について調査を実施し、政策提言を取りまとめました。4月27日に行われたセッションにおいて、モデレーターを務めた国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の竹本明生プログラムヘッドは、本タスクフォースがG7各国首脳に向けて作成した、3つのポリシーブリーフを含む政策提言を紹介しました:

    1. 持続可能な食料システムと生物多様性の保全を促進する
    2. 回復力(レジリエンス)、社会的保護、および社会保障を強化する
    3. 公正な移行を促進するための資金を強化する
    4. 公正な移行、環境の持続可能性、ウェルビーイングを測定するメカニズムを構築する
    5. 気候変動と持続可能な開発のためのパートナーシップを強化する
    6. 教育とユースのエンパワーメントの促進のための能力を強化する

    T7 Japanサミット タスクフォースセッション「ウェルビーイング、環境の持続可能性、公正な移行」

    地球環境戦略研究機関(IGES)のシニアフェローでもある京都大学の松下和夫名誉教授は、SDGsや気候変動に関するパリ協定の進捗が遅れていることを指摘し、統合的なアプローチの必要性を呼びかけました。そして、科学的研究と政策のギャップを埋め、エビデンスに基づく政策立案の必要性を強調しました。

    アジア開発銀行研究所(ADBI)のディナ・アズガリェヴァ上級研究員は、クリーンエネルギーへの移行をさらに加速させるためには、エネルギー貯蔵などの技術が必要であると指摘し、特にグローバルサウスの国々にとってこれらの技術がより安価に利用可能となるための研究開発にG7諸国が投資することを提案しました。また、地域社会の雇用を確保するためのリスキリング、再雇用、石炭火力発電所の転用を呼びかけました。

    UNU-IASの山口しのぶ所長は、タスクフォースの共同議長として発言し、G7に対し、社会経済的な格差を解消し、すべての人のために公正な移行を推進するよう呼びかけました。また、UNU-IASの研究成果に言及し、G7諸国は脱炭素技術の導入への普遍的なアクセスを実現するために主要な役割を果たすべきであると強調しました。社会的セーフティーネットの強化を求める提言にも触れ、総合的な社会的保障の強化に向け、公共交通機関、再生可能エネルギー、持続可能な建築物、電動モビリティを促進すること、そして、エネルギー関連産業における雇用、継続的な教育、リスキリングや研修の促進の重要性を強調しました。さらに、G7とG20のリーダーたちが、科学的エビデンスに基づいた能力構築と教育への統合的アプローチを通じて、SDGs、カーボンニュートラル、気候変動にレジリエントな(回復力のある)開発への行動をいかに再活発化させることができるかを説明しました。その上で、能力育成の取り組みを振り返り、国、地域、組織、個人のエンパワーメントを包含する全社会的アプローチを促しました。

    グローバル・ソリューション・イニシアチブの創業者兼社長であるデニス・スノワー氏は、コンプランアンスを高めるインセンティブを生み出すためには、社会的保障とセーフティネットの強化に向けた取り組みが公正なエネルギー転換政策と結びつけられなければならない、と主張しました。また、「公正なエネルギー転換」は、分断を解消し社会と市場を巻き込む多面的な政府のアプローチとしてとらえられるべきであると指摘しました。

    G7経済のグリーン化

    本セッションに続いて開催されたG7経済のグリーン化に関するセッションでは、竹本プログラムヘッドがパネリストとして登壇し、世界の食料システムにおいて、大部分の食料生産が開発途上国で行われている一方で、生産された食料が先進国に輸送され、消費され、廃棄されている現状を共有しました。その上で、食料の生産・消費の分野におけるカーボンフットプリントを削減に向けたより良い統合的な枠組の必要性を訴え、デジタル化を推進する必要性を強調しました。また、カーボンプライシングを推進する必要性を認識した上で、先進国、途上国の社会的受容を促進するためには、さまざまな政策措置が必要であると強調しました。