TICAD8サイドイベントで新しいアフリカのための知識とイノベーションへの投資について議論

, , ,

ニュース
  • 2022年9月14日     チュニス&オンライン

    2022年9月1日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)のサイドイベント「新しいアフリカに向けた知識とイノベーションへの投資」に参加し、アフリカと日本の研究連携および、水、エネルギー、材質科学、バイオテクノロジー、保健、ICT(情報通信技術)の分野での科学、技術および投資における連携の可能性について議論しました。

    本サイドイベントは、2022年8月24〜25日に行われた準備会合の結果を受けて開催されました。

    開会にあたり、社会、科学、技術に関するアフリカ‐日本シンポジウム(AFJASST)のサラー・ ハンナチ運営委員長は、アフリカの開発に向けてCOVID-19パンデミックから得た教訓について述べ、社会・経済的観点からのイノベーションと研究の重要性を強調しました。AFJASSTのアブベーカー・チェディク・バイエ運営副委員長は、アフリカ大陸における研究および技術移転を可能にする環境創出の必要性について述べました。AFJASSTの総合コーディネーターであるアデル・ムニフ運営委員は、アフリカの持続可能な開発に寄与する、市民および学術・研究・産業機関の新しいプラットフォームであるAFJASSTの目的について紹介しました。

    本イベントでは、4つのパネルディスカッションが行われ、異なる角度から新しいアフリカのための知識とイノベーションへの投資について検証が行われました。

    第1パネルセッションでは、日本-アフリカ間のパートナーシップを構築するための技術移転やイノベーション、機会創出の戦略について議論が交わされました。チュニジア産業・鉱業・エネルギー省のネイラ・ ヌイラ・ ゴンギ大臣は、本サイドイベントがTICAD8における主要な議論を構成していると述べ、日本の企業、アフリカのスタートアップおよびアフリカ大陸のインフラ間での協働の可能性を強調しました。

    UNU-IASの竹本明生プログラムヘッドは、アフリカの持続可能な開発の未来を確かなものとするための気候行動とSDGsとの間のシナジー(相乗効果)の重要性に関する基調講演を行いました。2030年までにアフリカの人口および経済が著しい成長を遂げることに触れ、気候変動に関するパリ協定の目標達成を目指しつつも将来のエネルギー需要を満たすためには、気候資金と再生可能エネルギーが重要な役割を果たすと指摘しました。また、竹本博士は、クリーンエナジー事業への投資機会と、アフリカにおけるカーボン・クレジットの仕組みの可能性を指摘しました。さらに、気候行動とSDGs間のシナジーを高めるための能力構築、および政策合意を実装するための制度的な能力構築を呼びかけました。

    第2パネルセッションでは、アフリカの持続可能な開発のための水、エネルギー、材質科学について議論しました。チュニジア、水研究・テクノロジーセンターのアフメド・ ガルビセンター長は、アフリカ大陸における水課題に対して持続可能な解決法をもたらすには、日本とアフリカ間での研究と協力が重要であると強調しました。

    国連大学前副学長である東京大学の沖大幹教授は、アフリカにおける水、気候、持続可能な開発に関する基調講演を行いました。沖教授は、ミレニアム開発目標での水関連項目から得られた教訓を紹介し、社会の発展が将来的な水の安全保障を高めることを強調しました。また、多国間主義に基づくグローバルな連携を通じた知識や技術の交換が、気候変動対策を実践し十分な投資を確保する上で重要であったことを解説しました。

    第3パネルセッションでは、バイオテクノロジー、保健、食料、農業、ICTについて議論が交わされました。農業研究・高等教育機関(IRESA)のヒシェム・ベン・ サレム事務局長は、まだ改善の余地はあるとしながらも、現在進行中のアフリカにおける技術移転を実装する取り組みへの認識を示しました。

    UNU-IASの福士謙介アカデミック・プログラム・アドバイザーは、日本の農業について焦点を当て、ICTを活用して農家と消費者を繋ぐ新しい市場メカニズムを紹介しました。この仕組みは、小規模農家の事業継続、および消費者がちょうど必要なだけの量の食料を購入することを可能にし、食品廃棄物を減らすことに繋がります。本メカニズムは、日本とチュニジア間においても適用できる可能性があります。また、UNU-IASによって実践された「持続可能な開発のための水プロジェクト」の研究成果に基づく、新たな報告書の出版を発表しました。

    第4パネルセッションでは、アフリカでオーダーメイド医療、遺伝子工学、ナノアートの分野における中小企業やスタートアップが直面する課題や機会について議論が行われました。