「2050年の世界」イニシティブの展望 開催

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  • 2018年10月15日     東京

    2018年10月9日UNU-IASは、国際応用システム分析研究所(IIASA)日本委員会、国立環境研究所(NIES)、公益財団法人 地球環境戦略研究機関(IGES)と共催で、セミナー「2050年の世界イニシアティブの展望」を開催しました。本セミナーは、IIASAと日本における研究コミュニティとの連携を強化し、将来的な展望を議論することを目的として開催されました。

    最初に竹本UNU-IAS所長/ IIASA日本代表理事より開会挨拶があり、SDGsを達成するため科学の果たす役割、また持続可能な社会実現に向けたSDGsのシナジーとトレードオフ効果を強調しました。UNU-IASでは本年度より国立環境研究所及び慶応大学と共同で新研究プロジェクト「SDGs達成に向けた総合的実施方法の包括的検討」を進めています。

    続いてナキセノヴィッチIIASA副所長による基調講演では、SDGs採択に至る科学的な背景、17ゴール間の関係性、また2030年を超えて持続可能な開発を実現するための行程について発表が行われ、「2050年の世界」(TWI2050)イニシアティブの第1次報告書「SDGsを達成するためのトランスフォーメーション」について解説がなされるとともに、国連気候変動枠組条約COP24 の重要な科学的インプットとしての「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)1.5℃特別報告書(10月8日承認)が紹介されました。TWI2050報告書は、「統合」を鍵として、現状では17のSDGsを達成する軌道に乗っていないこと、その上で縦割り型手法を避け、能力開発、スマートシティ、食料問題、水、脱炭素化とエネルギー、消費と生産、デジタル革命等を含む6つの移行経路を示しています。

    またナキセノヴィッチ副所長は、気候変動問題とSDGsの関係性に加え、気候変動の緩和・適応のための様々な方策がSDGsにとって複数の利益をもたらし得ることを強調しました。更に、持続可能な開発に向けたトランスフォーメーションは全体的な視点と効果的で包括的なガバナンスが重要であると述べました。

    パネルディスカッションで高橋室長(NIES)は、気候変動政策と大気汚染等他分野の政策間の関係性、トレードオフ、コベネフィットを認識した上で、気候変動政策をSDGsと整合的なものとしていく必要性に言及しました。また、亀井研究員(IGES)からは、都市における持続可能なビジョンを構築するにあたり、社会経済シナリオである共通社会経済経路(SSP)と科学的分析の結合が提案されました。
    次に藤田センター長(NIES)は、長期的移行により大きなインパクトを与えるためには、定性的手法と科学的定量的な手法を組み合わせ、気候変動を超えたより発展的な研究スコープの必要性が指摘されました。蟹江教授(慶應義塾大学)は、SDGsを一体不可分のものとして捉え、SDGsを実現させるために結束した行動と投資・金融セクターによる評価を行う必要があることを強調しました。
    会場の参加者からは、各発表に対しSDGs達成に向けた課題の優先付け、資金動員の必要性、民間セクターの役割、貧困・公平性の観点等に関する質問があり、登壇者との間で活発なやりとりが展開されました。

    今回のセミナーでの議論を通し、SDGsを達成するためには、科学に基づく長期的ビジョン及びマルチステークホルダーによる共通理解が必要であること、科学コミュニティにおける協働を強化し、多くの学問領域にわたるアプローチを取ることの重要性が認識されました。

  • ナキセノヴィッチIIASA副所長 PPT

    (9.4 MB PDF)

    亀井研究員(IGES)PPT

    (3.2 MB PDF)

    高橋室長(NIES)PPT

    (3.8 MB PDF)