UNFCCC適応部門ディレクターが気候行動、持続可能性のパラダイムシフトを訴える

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  • 2023年8月29日     東京

    Photo: Daniel Powell

    2023年8月24日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)適応部門のユセフ・ナセフディレクターとチリツィ・マルワラ国連大学学長との対談イベントを共催しました。本イベントは、「パリ協定とSDGsの達成に向けたグローバル行動の推進―SDGsサミットやCOP28を見据えて」をテーマとし、現代のグローバル課題について国際的な専門家が洞察を共有する場である「国連大学対談シリーズ」の一環として開催されたものです。

    ナセフディレクターは、UNFCCC、京都議定書、そしてパリ協定などの気候行動に関する国際枠組みを紹介し、枠組みを推進する上では科学的なエビデンスが重要であることを強調しました。また、来たる第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)では、パリ協定の目標達成に向けた世界全体の進捗状況を評価する仕組みであるグローバル・ストックテイクの第一回目が実施されることを取り上げました。COP28では、気候変動適応のグローバル目標も決定される予定であり、各国が事前の備えとして計画すべき適応策に加え、保険の仕組み、移住、そして社会保護制度などのとるべき事後対応が明確になるでしょう。

    加えてナセフディレクターは考え方の変革を訴え、人々は、将来世代にとって有益となるよう経済、政治的な意思決定を行うべきだと主張しました。また、ナセフディレクターによれば、サステイナビリティを推進する形でテクノロジーを発展させるには、そのための動機づけが必要です。

    気候変動関連のキャリア形成に関し、ナセフディレクターは気候変動への関心を高めることに取り組むことを勧めました。気候変動はグローバルな危機ではありますが、世界の仕組みに関する私たちの先入観を見直す契機をも与えてくれます。

    参加者との質疑応答においてナセフディレクターは、損失と損害の基金をどのように運用可能なものにしていくか、また科学に基づいた豊富なデータを管理する場を作る必要性についても説明しました。またナセフディレクターは、若者が気候変動の現状を変え、気候行動のリーダーとなることへ期待を寄せました。

    結びに、ナセフディレクターは、「問題と解決策」という短絡的な考え方からは離れるべきであり、気候変動という一つの分野を超えて人々や地球にとって持続可能、公平そして豊かな未来を追求するために広く物事を考えることが重要であると強調しました。