赤阪清隆氏、国際機関で顔が見える日本人の必要性について語る

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  • 2014年4月23日     東京

    2014年4月15日(火)、第1回UNUカフェ「赤阪清隆氏と語らう」が国連大学本部で開催され、国際公務員を目指す学生や、グローバル人材教育に関心のある若手社会人の方々を中心に多くの方々が参加されました。

    この日のゲストの赤阪清隆氏は、大学卒業後、外交官になることを目指して入省した外務省を契機に、WTOの前身であるGATT、WHO、OECDでの任務を歴任。その後、ニューヨークにある国連本部の広報担当事務次長を務め、現在、公益財団法人フォーリン・プレスセンターの理事長として活躍されています。

    国連職員が行う仕事とは

    国連での仕事について、「オペレーショナルな仕事とノーマティブな仕事とに分けられる」と赤阪さんは解説を始めました。オペレーショナルな仕事とは、ユネスコやユニセフが行っているような現地に出向いて人助けをする仕事で、ノーマティブな仕事とは、交渉や会議をサポートする仕事。人助けをする仕事に比べ、交渉や会議をサポートする仕事は机に向かっていることが多く、評価されにくい仕事でもあるといいます。また、多国間の交渉が始まると、滝のように続くスピーチの末、最終日にすべての決定が下されるため、「日本だけがノーと言っていても他の国がそれで合意できましたよと言われれば、それに従わざるを得なくなる」点が多国間交渉の怖さでもあると強調しました。

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    Photo: C Christophersen/UNU

     

    国連の予算と日本人職員の割合

    この日、赤阪氏が最も力点を置いて解説されたのは、国連に対する日本の拠出金の額に比べ、日本人職員が少ないという現状です。2013年の時点で、日本の国連通常予算への年間拠出金は約276億円、平和維持のための拠出金は約750億円、合計すると日本政府が国連本部に支払っている金額は1000億円になるといいます。日本は、全体の10.833%を占める世界第2位の拠出国にも関わらず、国連本部で働く日本人の数は、全体の約0.5%で、このギャップの意味することは「11%のお金を払っていてもそのほとんどが他の国の人の給与になっている」と赤阪氏は指摘しました。

     

    2012年末の国連専門職員全体3万人中の日本人数764人 (赤阪氏の当日のスライドより)

    2012年末の国連専門職員全体3万人中の日本人数 764人 (赤阪氏の当日のスライドより)

    日本人が国連職員になるための方法としては、空席広告への応募、国連YPP競争試験の受験、外務省JPO派遣制度への応募、日本国内各省から出向する、というルートがあり、このなかで赤阪氏は、「国際機関に入りたいと思っている人はJPOをまず目指して、JPOに入れば、2年たったあと残る率が非常に高いということが証明されています」として、競争率が比較的低いJPOを勧めました。

    日本人の強みと弱み

    司会を務めたUNU-IASの竹本和彦所長から、「日本人の強みと弱み」について尋ねられると、赤阪氏は、誠実性と仕事に対する取り組みの真剣さを「強み」として挙げ、一方で、自分の主張をしっかりと伝えられず、まじめに働いていても理解されない点を「弱み」として挙げました。

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    さらに、こうしたコミュニケーション能力向上のための訓練の機会が日本では少ないため、「子どもさんがいたら子どもさんにも意見を言うような訓練をして頂きたい」と訴えました。

    また、「自分の専門を決めるのが難しい」という学生からの問いかけに対して、赤阪氏の貿易・保健・環境の多分野での経験が、後に持続可能な開発の会議で役立ったことを、「目の前の自分の好きなことや自分がやらなければならないことを一生懸命やっていたら、後で振り返ったときに点と点がつながって今の自分がいることに気がつく」として、「何をしていても、国際公務員にはそれに見合うポストはある」と話しました。

    国際機関で日本人の顔が見えないことで、日本以外の国が下した決定に請求書だけが送られ続けることになりかねない、そう危惧する赤阪氏の思いは、国際公務員を目指す若い学生達との対話で深まり、未来へ向けた前向きなメッセージとして、参加者された方々に託されました。

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    当日赤阪氏が使われたスライドをご提供頂きました。こちらからダウンロードしてご覧頂けます。