2023年3月10日 東京
2023年3月2日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の山口しのぶ所長が、「万博で創る未来社会~大阪・関西から全国、全国から世界へ~」と題したシンポジウムのパネルディスカッションに参加しました。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博:EXPO2025)に焦点を当てた本イベントには、対面・オンラインを合わせて約1,300名が参加しました。企業や自治体がそれぞれの取り組みを紹介するとともに、さまざまな登壇者たちが新たな科学技術や「テーマウィーク」、地方自治体の連携に関して議論を交わし、新しい万博のあり方を模索しました。本シンポジウムは、内閣官房国際博覧会推進本部事務局が主催し、日本経済新聞社の共催によって行われたものです。
「テーマウィーク」に関するパネルディスカッションに登壇した山口所長は、まず新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響によって持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みが遅れていることに触れ、万博を成功に導くためには「誰一人取り残さない(leaving no one behind)」というSDGsの理念を明確に示し、「テーマウィーク」に単一の目標を紐付けるのではなく、複数の目標と対応させシナジー(相乗効果)を高めるようなやり方で実践することを提案しました。また、万博での「テーマウィーク」を、私たち一人ひとりがSDGsのローカライゼーション(地域化)を促進し、地域問題の解決に主体性をもって取り組むための起爆剤としたいと述べました。さらに、SDGs 17「パートナーシップで目標を達成しよう」の重要性を強調し、万博の各テーマにさまざまなネットワーク機関を巻き込むことを提案しました。例として紹介された中には、生物多様性に関する「SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)」、「持続可能な開発のための教育(ESD)に関する地域の拠点(RCE)のグローバルなネットワーク」、日本の大学の協働イニシアチブである「SDGs推進大学連携プラットフォーム(SDG-UP)」というUNU-IASが事務局を務める3つのパートナーシップも含まれています。
議論の中で、山口所長は日本の若者の間でSDGsの認知率が高いことに触れ、万博を通じて若者のSDGsへの理解をさらに深めるべく情報発信を行い、行動変容を促していくことの大切さを強調しました。その上で、UNU-IASがUNESCOと協力して気候変動や生物多様性をテーマに開催している「RCE若者のアートチャレンジ」を例に、万博の魅力を高めるために、アートや国際会議などさまざまなチャンネルを使って若者の参画を支援し、世界に発信していくことが重要であると述べました。また、万博が若い世代にとって忘れられない体験を提供する場となる可能性について語り、万博での議論が持続可能な社会の構築へと繋がっていくことに期待を寄せました。