気候変動に対する地域社会のレジリエンス強化に関する研究結果を発表

, ,

ニュース
  • 2014年2月28日     東京

    2014年2月14日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)のワークショップにおいて、気候変動問題に直面しているアジア地域社会のレジリエンス(回復力)を強化する方法についての3カ年研究プロジェクトの成果が発表されました。この国際ワークショップ「レジリエント・アジア:持続可能な未来のための伝統と近代システムの融合」は、東京大学サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)と総合地球環境学研究所(RINH)が共同で、国連大学本部(渋谷区)にて開催したものです。そこでは、研究プロジェクト「アジア農村地域における伝統的生物生産方式を生かした気候・生態系変動に対するレジリエンス強化戦略の構築(CECAR-Asia)」の成果が発表されました。

    ワークショップは武内和彦教授(国連大学上級副学長)による開会の挨拶で始まりました。その挨拶の中で同教授は、従来型の農業システムを持続可能なシステムに転換する新たなレジリエンスの形を構築するうえで、伝統的知識そのもの、および伝統的知識と近代技術の統合がいかに重要であるかを強調しました。河野泰之教授の基調講演では、近代的なシステムと伝統的なシステムの融合、この融合を実現するために解決しなければならない問題、そしてこのハイブリッド技術を実現するうえで小農がいかに重要な役割を果たすかが強調されました。2つ目の松岡俊二教授による基調講演では、多様性、社会改革、制度の持続性の必要性に関する同教授の考えが紹介されました。

    開会式に続き、提携大学と共同で過去3年間にわたって実施された研究のプレゼンテーションが行われました。これは、気候変動に対する地域社会のレジリエンスの要素を調査し、アジアの農村地域における持続可能な開発を推進するために社会的な回復力を強化する方法について研究したものです。松田浩敬博士は、ベトナムで実施されている米生産の適応に関する研究について説明しました。ベトナムでは、VACシステム(穀物栽培・水産養殖・畜産(Vuon-Ao-Chuong)を意味する伝統的農業システム)とハイブリッドシステムを農業に取り入れることで人々は気候変動に対応しています。スリカンサ・ヘラート博士は、スリランカの分散型地域社会管理において、古来の灌漑システムと近代的なシステムを統合することで、レジリエンス、効率性、多様性をもたらすモザイク・システムという概念を紹介しました。内藤大輔博士によるインドネシアの地域共有林に関する研究では、小農のレジリエンスが協調されました。マイ・チョン・ニュアン教授は、ベトナムではどのように困難な問題を機会に転換しているかについて考察しました。イルハム教授の研究では、インドネシアの農村地域に暮らす人々は被害を受けやすいが、被害を受けにくい地域に暮らす人々に比べて、変化への対応方法についての意識が低いことが明らかになりました。S・ウィーラクーン教授は、今後数十年間のスリランカの気温変化を予測したうえで、適応対策として、より耐性の高い稲品種を導入すること、水管理の改善と貯水タンクを利用した既存の灌漑システムの活用を通して、貯水機能を備えた灌漑システムを強化することを提案しました。

    プレゼンテーションの後に行われたパネルディスカッションでは、武内教授がモデレーターを務めました。結論として、農業従事者の回復力(レジリエンス)と適応力を強化するために、伝統的なシステムと近代的なシステムを融合し、気候が不安定な現在の状況において「スマートアグリ(次世代農業)」を実現する必要性が強調されました。シンポジウムはニュアン教授の閉会の挨拶をもって閉幕しました。