世界水週間でアジアにおける水の経済価値を協議

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  • 2022年8月31日     オンライン

    2022年8月23日、ストックホルム国際水研究所が年次開催している「世界水週間会議」で、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、オンライン・セッション「アジアにおける水の価値化:手法と戦略」を主催しました。適切な水の価格付けと分配、水再利用への投資の促進、水の重要性に対する社会意識向上などを可能にする政策や戦略の推進を目指し、水の経済価値を評価する実践的な手法とアジアにおける適用について、80以上の国際団体が参加して議論を交わしました。

    本セッションは、アジア開発銀行、東京大学、国連大学物質フラックス・資源統合管理研究所 (UNU-FLORES)との協力で開催されました。

    UNU-IASの福士謙介 アカデミック・プログラム・アドバイザーは、基調講演で水の価値について概説し、持続可能な社会の達成に不可欠な経済と環境とのバランスおよび調和の重要性を強調しました。また、エビデンスに基づく判断をもって水関連のステークホルダーと意思疎通を図る上で、科学的データとモデル開発が果たす役割が特に重要であると強調しました。

    続く分科会セッションでは、3つの議題について参加者間の意見交換が行われました。そのうち、水の価値の定量化ツールとその応用に関する議論では、UNU-IASが構築した水と経済の相互連関を可視化する評価の枠組みと、中国における水の価格化政策に関する近年の研究事例が紹介されました。その中で、UNU-IASの非常勤教授かつ富山大学教授であるギータ・モハン博士は、IASが新たに発表した報告書について紹介しました。同報告書は、IASがインド、インドネシア、ネパール、タイで行った水研究を元に、環境および経済政策の改善に資する有用な視点とアプローチをまとめたものです。

    上記の他、産業のための水の価値化についての議論が行われた分科会セッションでは、水を価値化するための様々な実践的なアプローチに関する知見が提供され、持続可能な水の価格付けや水管理への官民投資を阻害する要因について議論されました。

    3つめのグループでは仮想評価法(Contingent Valuation Method: CVM)と支払意思額(Willingness to Pay)に関する議論が行われ、市場価値に換算できない恩恵や費用の価値化に対処するためのADBのアプローチが紹介され、ADBに関する経験や最近の出版物に基づいて水の経済価値の評価の在り方について、専門家と参加者が意見を交わしました。

    その後、今回のセッションの総括として各議論の成果共有が行われました。UNU-FLORESのセレナ・カウッチ アソシエート・プログラム・オフィサーは、水の価値化が今後も議論の余地のあるテーマであること、特にその実施には財政的な施作のみならず、社会面を含む課題解決に向けた新たな技術や方策を見据えた包括的な手法が必要であることを強調しました。

    本セッションの録画は、World Water Week YouTube Channelにて視聴可能となります。