2015年7月23日 石川県七尾市
能登半島には、たくさんの里山里海地域があり、そのうちのいくつかは、国連食糧農業機関に世界農業遺産として認定されています。国連大学のイヴォーン・ユーは、 能登島ダイビングリゾートが撮影した七尾の海中映像から、海草・海藻が多くの生物の棲みかであり、海中の生態系を健全に保っている現状を解説しました。また、いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(UNU-IAS OUIK)の永井三岐子は、この地域の生態系に関する伝統的な知識と活動は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも貢献できるはずだと述べました。
さらに、海草の一種であるアマモの生態についても詳しい解説がありました。「里海」のコンセプトを最初に提唱した九州大学名誉教授の柳哲雄氏は、里海のアマモ場は魚たちの産卵場でありだけでなく、仔稚魚の育成場、アマモの葉上植物を起点とした食物連鎖、生物の棲みかなどの機能を果たしているとして、「どのような管理をすれば漁業と共存ができるかを考えることも重要だ」と述べました。
しかしながら、石川県水産総合センター普及指導課長の池森貴彦氏は、能登半島が特にホンダワラ類の藻場の面積としては全国1位を誇っている一方で、近年は夏期の高水温により、海草が広範囲に枯れてしまっている現状を報告しました。20年ほど前からエゴ草が全く取れなくなり、魚や貝類の数も年々減っているという漁師の蔵谷弘氏からの報告もあり、会場からは、里海の環境の変化は陸での人間の活動によって影響を受けている可能性もあるとの指摘が挙りました。
本講座は、いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の研究活動の一環として行われました。
OUIKは、今後も「能登の里海ムーブメント」の活動の一環として、能登地域にてシリーズ講座(年間4回)の開催や、里海の研究や里海の発信イベントの協力を行っていきます。第2回の講座は、8月29日(土)午後13:00より穴水町で開催される予定です。