「福島の教訓を日本および世界で活かしていく」福島市にてシンポジウム開催

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  • 2016年2月25日     福島市

    fgc-fukushima-symposium-2016

    2016年2月16日(火)、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、福島市のコロッセふくしまにて公開シンポジウム「福島第一原発災害の人々と社会への影響 ― これまでの教訓とこれから学ぶべきこと」を開催しました。本シンポジウムには、約60名の方が参加し、多くの報道陣が詰めかけ、東日本大震災と福島第一原発事故が人々や社会にもたらした影響、またこれまでに得られた教訓とこれから学ぶべきことについて考える機会となりました。

    冒頭、武内和彦国連大学上級副学長よりFUKUSHIMAグローバルコミュニケーション事業の紹介と挨拶がされた後、内堀雅雄福島県知事による歓迎挨拶および福島の復興状況に関するプレゼンテーションが行われました。続いて当プログラムのモシニャガアンナ研究員と佐藤映子研究員より、それぞれ「避難問題と生活再建」と「リスクコミュニケーション」についての研究成果と政策提言が発表されました。

    モシニャガ アンナ研究員は、原発災害が、長期避難や生業の喪失といった複雑な問題を伴うことを振り返ったうえで、福島の原発避難を国際的な観点から国内避難民問題としてとらえる意義を強調しました。現地調査の結果を踏まえ、それぞれの避難者の生活状況が多様化しているなかで、帰還か、現地統合か、移住かの持続的な選択ができるまで、継続的な状況把握とそれに見合った支援が求められることを述べました。

    佐藤映子研究員は、復興施策の一つとして、リスクに関するコミュニケーションのあり方が重要であるとし、現地調査や研究ワークショップを踏まえ、(1)日常生活に直結する放射線情報の必要性、(2)不確実性を伴う放射線科学、(3)放射線リスクの認識の多様さ、(4)災害復興に伴う必要情報の多様さ、(5)被災者間の「情報格差」等の課題を示しました。そして、放射線に対する懸念を考慮した測定データの解釈支援、放射線科学に関する対立意見の明確化や情報弱者をなくす社会的取り組みが必要であると述べました。

    その後、行政・学界・市民社会の代表者を交えてのパネルディスカッションや、参加者との質疑応答を通して、多様な見地からの活発な議論交換が行われました。会場からは、「リスクコミュニケーション」を減災に活かすためのキーワードとして活用すべきではないかといった意見や、福島県で起こった災害ではあるが、この経験を人の知として、福島県内だけでなく、世界に向けてもっと発信し、活用されるべきではないかという意見があがりました。

    最後に、各パネリストから、的確な情報発信と多様な価値観を大切にすること、主観的に安全・安心と納得できる段階に至るまでの対応が求められること、復興に向けた特効薬はなく時間をかける必要があること、市民が議論に参加していくことが重要であること、そして福島の経験を風化させないため、また教訓を日本および世界で活かしていくため、これからも状況を分析し発信し続ける必要があるとして、パネルディスカッションは締めくくられました。

    当日のプログラムおよび関連資料はこちらからご欄いただけます。

    本公開シンポジウムは、FUKUSHIMAグローバルコミュニケーション事業の活動の一環として開催されました。

  • プログラムおよび登壇者プロフィール

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    公開シンポジウム開催概要

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