川口順子氏、「自分の売り」をもって人に尽くすことが大事と語る

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  • 2015年4月22日     東京

    2015年2月12日(木)、第5回UNU CAFÉ「川口順子氏と語らう」が国連大学本部で開催されました。川口氏は、世界銀行エコノミスト・在米大使館公使や、環境大臣・外務大臣を歴任後、現在は、明治大学国際総合研究所の特任教授を務めています。

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    Photo: C Christophersen/UNU

    国の名前は人の顔と名前

    川口氏が最初に海外を意識したのは、本が貴重だった時代の幼少期に、自宅にあった二冊の本のうち、船での東南アジア旅行記の本を繰り返し読んだときだといいます。その後、高校1年生のときに、学校でアメリカから帰国した生徒たちの報告会が開かれ、自身も一年間アメリカにホームステイすることを決意。ドイツやフィリピンなど、様々な国々から来ていた友人たちと過ごしたことで、この時以降にある国の名前を聞くと、当時一緒に過ごした友人の顔と名前が頭に浮かぶようになりました。

    日本人の食

    最近、フランスに出張に行く機会があった川口氏は、パリでフランス料理店を開いている日本人シェフが31人もいることを聞きました。 京都でフランス人シェフが和食のお店を開く様子が想像し難しいことを思うと、パリでの日本人シェフの活躍に驚いたといいます。川口氏は、以前にもアフリカのモーリシャス共和国に訪れたときに、日本人シェフに教わった現地のシェフが、魚の海藻詰めや味噌汁を出していたことや、アフリカのワシントンDCで、日本人シェフが椎茸や大根を使った和食を出していたことを思い出し、「日本人の食」というキーワードで世界各国でのエピソードを披露。

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    そして最後に、カンボジアのアンコールワットでクッキーを販売しているマダム・サチコの話に触れました。今年で開店10年目の土産物店を経営するマダム・サチコは、大学3年生の時にタイに行き、東南アジアの人々に雇用を提供したいと思いました。マダム・サチコはタイで日本語を2年間教えたあと、カンボジアに渡り、カンボジア人に雇用機会を提供するために、アンコールワットの土産物店を開店しました。

    自分の売りをもって人に尽くす

    これらのエピソードを踏まえ、これから海外で活躍したいと考える若い人々に大事なことは、二つあると川口氏は強調します。一つ目は、これをもって世界に挑戦できるという、自分の売りやスキル。二つ目は自分のことを相手の思考回路に合わせて表現できるコミュニケーション能力。それはそのまま「人のために尽くす気持ち」につながると川口氏は語りました。
    海外で何か日本を感じるものに触れたときに、その裏にある個人のストーリーを細かく聞いて理解しようとする川口氏。会場を訪れていた学生に、自身の売りを尋ねられると、「売りと言えるものは経験くらいしかないけれど、あえて言うなら好奇心」と答えました。これに対し、司会を務めたUNU-IASの竹本所長から「判断力・決断力・決めたことをやり抜く力ではないか」と補足されると、川口氏は「それを聞くことが出来て今日ここへ来て良かった」と笑い、会場を和ませました。

    良き日本人であること

    川口氏の朗らかな雰囲気に、「大学生にとってどの部分を伸ばせば良いか」という具体的な質問も挙がり、「良き日本人であること」に徹することで、国際人・国内人の区別はおのずとなくなるはずで、日本の周辺国が豊かにならなければ、日本にとってもテロなどの脅威にさらされるリスクが高まると答えました。

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    さらに、第一線で活躍するフロントランナーを支える立場の人はどうすれば良いかと尋ねられると、一人一人がやりたいことをそれぞれの場所でやるのが大事で、そういった日本人が増えれば、外国から見た日本人の印象も変わり、外交も変わると語りました。また、「大人の減点主義的な視点が、子どもの良いところを見逃してしまいがちな現状の中、どうしたら若い人のチャレンジを後押しできるのか」という質問には、「減点主義であれ、力を出す人は出しているので、どんな状況でも出せる強い力や個性を、どうやって子どもに伝えるかを考えるのが大事だ」と強調しました。その後も、身近な距離で質問できるとあって、川口氏を囲んで学生達の輪が広がり、川口氏の言う「強い力」がその場で共有されました。

    川口順子氏のキャリアパス

    小学生の時に東南アジアの旅行記を繰り返し読み、海外に思いを馳せる
    高校1年生のときに一年間アメリカに留学する
    東京大学教養学部を卒業
    通商産業省に在職中にイェール大学大学院に留学して経済学修士を取得
    世界銀行エコノミストを務める
    外務省在アメリカ合衆国日本国大使館公使を務める
    環境大臣、外務大臣を歴任する
    2013年より明治大学国際総合研究所の特任教授を務める