勝間靖氏、何があってもめげない強靭さが大事と語る

ニュース
  • 2014年12月15日

    2014年12月3日(水)、第4回UNU CAFÉ「勝間靖氏と語らう」が国連大学本部で開催されました。勝間氏は、 中学3年生のときに、元文部大臣の永井道雄氏の講演を聞き、国際公務員という仕事があることを初めて知ります。 高校3年生のときにペンシルベニア州フィラデルフィア郊外の学校に交換留学生として初めて国外に渡り、日本の大学に進学してからはボランティアでホンジュラスに向かいます。修士課程では南での貧困と暴力に目を向け、国際人権法を専攻。在籍中に外交官試験を受けることを薦められましたが、当時の指導教員の言葉から、国連職員を目指すことを決意します。その後、開発コンサルタントを経て、ウィスコンシン大学で開発社会学の博士号を取得すると、外務省JPO試験を受験。UNICEFメキシコ事務所で国連のキャリアをスタートさせ、2006年からは早稲田大学の教授を務めています。

    DSC1246
    Photo: C Christophersen/UNU

    30戦30敗でもめげない

    幼少期から現在に至るまでの道のりを、気分の好調・不調を表すグラフで話し始めた勝間氏は、UNICEFメキシコ事務所から正規職員になるために約30のポストに応募後、アフガニスタン事務所に最後に採用されたことに触れ、「繰り上がり当選だった」と述べ、会場からの笑いを誘いました。当時のメキシコは、子どもの年齢上の定義が州によってまちまちで、児童労働からの子どもの保護政策に支障が生じていましたが、子どもの商業的な性的搾取を禁止する連邦法が作られる過程に関わるなど、UNICEFの支援も政策中心に移行しつつありました。対するアフガニスタンでは、正統性を求めない武力行為を行うテロリズムが台頭し始め、中立だから攻撃されないという時代が終わったことを身近に感じたといいます。

    img-unicef
    UNICEFアフガニスタン事務所内での協議の様子 写真提供:勝間靖氏

    さらには、部下を率いて予算を動かす権限が若いうちに与えられたとき、 答えをただ伝えるのではなく、多文化間のチームと一緒に達成することの大切さに気付いたと話しました。

    自分のバイアスを自覚する

    当日参加した学生から、アフガニスタンで注意していたことを尋ねられると、「自分にバイアスがあることを常に意識すること」と答え、日本文化の当たり前を他国の当たり前だと思わずに、現地スタッフと協力していくことの大事さを強調しました。また、JPO派遣制度を利用した経験について尋ねられると、JPOでも職員であり即戦力として働くことになるので、ジェンダー・障害・宗教の違いを含む多文化社会での経験を積むために、大学院生のうちに国際機関でのインターンをすることを強く薦めました。

    チャリティから人権保護へ

    司会を務めたUNU-IASの竹本和彦から、最初のキャリアとしてUNICEFを選んだ理由を尋ねられると、勝間氏は、世界人権宣言などを国内で論じていても、貧しい国で人権を大切にするにはどうしたら良いかの処方箋が見出せなかったから、と述べました。また、当時のUNICEFは、「毛布を1000枚配った」や「井戸を10本掘った」と豪語する人々が組織の中で目立っていたものの、その後ゆっくりとチャリティから子どもの権利の実現を目指す組織に変遷していったと語りました。さらにUNICEFの弱みについて問いかけられると、今は当時とは事情が違うはずだとしながらも、資金調達能力が高いがゆえに、国連内のパートナーシップを大事にする「援助協調」ではなく、単独で走りがちだったと答えました。

    _DSC1308

    最後に、自分のキャリアについて、時に家族や友人の反対を押し切ってでも、めげない強靭さが大事だと話すと、終了後も勝間氏に今後の進路を相談する学生たちの長い列が伸びました。照明が暗くなってからも最後の一人まで丁寧に応対する勝間氏の声に後押しされ、学生たちはこの日、国連大学の正面玄関から、次への一歩を踏み出しました。

    勝間靖氏のキャリアパス

    中学3年生のときに、永井道雄氏の講演で「国際公務員」という仕事を初めて知る
    高校3年生で、アメリカ・ペンシルベニア州の学校に交換留学
    大阪大学大学院法学研究科を修了
    海外コンサルティング企業協会研究員として、開発エコノミストになる
    ウィスコンシン大学マディソン校で開発学の博士号取得
    国連児童基金(UNICEF)メキシコ事務所にJPOとして就職。その後アフガニスタン、パキスタン、東京事務所へ勤務
    2006年から早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で教員を務める

    当日勝間氏が使われたスライドをご提供頂きました。こちらからダウンロードしてご覧頂けます。