2025年5月23日 金沢
Photo: Nicholas Turner/UNU-IAS
2025年5月20〜22日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は石川県金沢市にて、都市の自然再生に向けた文化や市民参画に関するイベントを共催しました。イベントには、国連環境計画(UNEP)による都市の生態系の回復を促進させることを目的とした世代間環境回復プロジェクト(Generation Restoration project)の11のモデル、パイロット都市から代表者が集いました。
5月22日に国際生物多様性の日を記念して開催された公開シンポジウムでは、文化遺産を保護しながら都市の生態系を再生する革新的なアプローチについて議論しました。日本・金沢、ケニア・キスム、トルコ・イスタンブール、メキシコ・メキシコシティ、フランス・パリ、米国・シアトル、カナダ・トロントの7都市から専門家が集い再生に向けたイニシアティブを紹介しました。
村山卓金沢市長による開会挨拶、UNEPユリア・ルブレバアソシエイトプログラムオフィサーによる基調講演では、気候レジリエンス、公衆衛生およびコミュニティのウェルビーイングなど都市の生態系再生がもたらす便益が紹介されました。また、持続可能な都市と地域をめざす自治体協議会(イクレイ)イングリッド・コッツィーディレクターによる基調講演では、都市がイノベーション、サステイナビリティ課題への重要な解決策を生み出すハブであることが強調されました。環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性戦略推進室鈴木渉室長は、都市が自然と人々の共生の取り組みに向けた中心であることを踏まえ、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)と関連するターゲットを紹介しました。また、持続可能な食への移行の重要性についても言及しました。
7都市から参加した専門家は、都市生態系再生イニシアティブの実践から得られた発見や学びを共有しました。トロントは先住民コミュニティと生態系の管理を推進する取り組みを、メキシコシティは5,000ヘクタールの土地を再生しアグロエコロジーの生産を進め3,000名の消防士の研修を行ったAltépetlイニシアティブを紹介しました。また、パリで行なっている校庭オアシスプログラムも紹介され、小さい緑地においても人々が自然と関わるデザイン設計ができれば大きな影響があることを示しました。キスムでは都市の公園再生を通じてヒートアイランド現象が減少し、雇用が創出され新たに憩いの場ができたことが共有されました。
イクレイ内田東吾日本事務局長がモデレーターを務めたパネルディスカッションでは、コミュニティ主導の都市の再生について議論を展開し、文化と自然のつながりについて検討を進めました。再生の取り組みに当たっては、コミュニティへのエンパワーメントや世代を超えたコミュニケーションが必要であることを強調しました。また、喫緊の課題に迅速に対応しながら合意を形成するには、政治力も重要になることも取り上げました。さらに、小規模のイニシアティブも大きな影響を及ぼすことから、過小評価しないことが大切であることも共有されました。
閉会挨拶にてUNU-IAS山口しのぶ所長は、都市自然の回復におけるコミュニティの重要な役割を強調しました。UNU-IASいしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)が、GBFや国連生態系回復の10年など地域の取り組みとグローバルな政策アジェンダをつなげるユニークな役割を担っていることにも言及しました。OUIKでは、研究や政策への関与を通じて地域における生態系の再生のモデルを開発しています。2023年10月には、金沢市がUNEPの都市の生態系の回復を促進させることを目的とした世代間環境回復プロジェクト(Generation Restoration Project)における自然を基盤とした解決策の優れた実績を持つ11のロールモデル都市の一つとして選定されました。
本シンポジウムと並行して、金沢市にて都市の回復についてのワークショップやフィールドビジットが開催されました。参加した専門家は、自身の都市における実践から得られた知見や優良事例をそれぞれに紹介し、共に未来の都市の自然回復に向けた戦略を策定しました。
Photo: Nicholas Turner/UNU-IAS
Photo: Nicholas Turner/UNU-IAS
本イベントは、金沢市、UNU-IASおよび環境省の主催、UNEP、イクレイ日本事務局、石川県の後援により開催されました。本イベントは、国連大学(UNU)50周年記念のイベントの一つです。