2022年7月10日 オンライン
2022年6月24日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、サステナビリティ・リサーチ&イノベーション会議2022(SRI2022)で、エネルギーの公正性に焦点を当てた、カーボンニュートラルとSDGsの相互関係について議論するオンラインセッションを開催しました。
開会挨拶において、UNU-IAS非常勤教授でもある上智大学の鈴木正史教授は、脱炭素への取り組みとSDGs達成への取り組みの相互関連性は正負の両面を持ち得ると述べ、関連する社会的公正性の問題を政策過程に組み込むことの重要性を強調しました。
UNU-IASのマへスティ・オキタサリ リサーチ・アソシエイトは、公正な移行を確実に行っていくための調整の不足など、インドネシア政府がカーボンニュートラルとSDGsの相互関係に対処するにあたって直面している課題について説明しました。そして、SDGsの達成に取り組みつつ、低炭素政策を開発政策に統合することがトレードオフ(両立不可能性)の最小化に役立つと述べました。
UNU-IASのウッパラット・コーワタナサクン リサーチフェローと竹本明生プログラムヘッドは、パリ協定と持続可能な開発のための2030アジェンダとの間のシナジー(相乗効果)に関する最近の文献について概説しました。その上で、研究の多くは、直接的で文脈に特化した気候変動緩和政策の影響に焦点を当てており、需要側面での緩和を促進するためには、革新的な教育システムやユースのエンパワーメントといった分野横断的な取り組みについても研究が行われる必要がある、と述べました。
鈴木教授は、カーボンニュートラルとSDGsの間のシナジーとトレードオフ(両立不可能性)の程度の違いについて説明しつつ、日本の事例を共有して、トレードオフからシナジーへの転換を促すための分野横断的な政策を設計することの重要性を強調しました。
ヨーク大学のポール・ハドソン講師は、沿岸部のマングローブ林および都市の運河システムの再生に関するコミュニティを基盤とした二つのプロジェクトについて紹介し、自然に基づく解決策への肯定的な公共認識が、いかにSDGsの相互関係を活用するために重要であるか説明しました。
AT Osborne Compのアソシエイトで、エラスムス大学のGovernEURアソシエイトでもあるユルゲン・ファン・デル・ ヘイデン研究員は、クリーンエネルギーと気候変動適応、エネルギー貧困の減少、水の浄化および土壌修復にも役立つ、帯水層内の熱エネルギー備蓄システムをコミュニティが協働で開発したオランダの革新的な事例を紹介しました。
UNU-IASの客員リサーチフェローでもある、森林総合研究所の森田香菜子主任研究員の司会による議論では、SDGsと気候政策をCOVID-19からのグリーンリカバリーにリンクさせるとともに、SDGsの相互関係に対応するための統合的な解決策を実施することの必要性が強調されました。
7月21~22日に、国連大学(UNU)にて「第3回パリ協定とSDGsのシナジー強化に関する国際会議」が開催されます。詳細な情報については会議ウェブサイトから確認いただけます。