東アジアにおける伝統的農業の保全に関する学会を開催

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  • 2014年5月1日     Xinghua City

    国連大学は2014年4月7日から4月10日まで、中国江蘇省興化市で開催された「第1回東アジア農業遺産学会(ERAHS:East Asia Research Association for Agricultural Heritage Systems)」を共催しました。本会議は中国、日本、韓国からの研究者、専門家、政策立案者、地方政府職員、地域の関係者、FAO国連食糧農業機関の担当官と国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)の研究者を含め、約200人が参加し、東アジアにおける農業遺産システムの保全に関する科学的な研究や優良事例について活発に議論し、情報交換を行いました。

    本会議の基調講演「伝統的農業のレジリエンス」において国連大学上級副学長の武内和彦教授は、先進国と発展途上国を問わず全ての国が気候変動や自然災害による生態的圧力や、世界的な傾向でもある農村部から都市部への人口のシフトによる人口構造の変化など同じような課題を共有していることを指摘しました。何世紀にもわたって続いた伝統的な農業システムは、高度な生態的、社会的、経済的なレジリエンス(回復力)を有します。しかしそれは、短期的には経済的に有利であるが長期的には必ずしも持続的でない近代農業によって衰退の危険性に脅かされています。東アジア諸国は、農業システムに多くの類似点を共有しているため、ERAHSが伝統農業への生態的・社会的・経済的変化の影響に対応するための専門知識を共有し、伝統農業の持続可能性を維持するために重要なレジリエンスの向上方法を探求し、各国間の科学者、専門家や政策立案者が協力するための交流プラットフォームになることを期待していると武内教授は述べました。

    基調講演は、このほかに、FAO-GIAHS運営委員会委員長・中国工程院院士の李文華教授が「アジアにおける農業遺産システムの保全」、世界農業遺産基金代表パルヴィス・クーハフカン氏が「農業におけるサステイナビリティ・サイエンスのベンチマークとしてのGIAHS」、FAOのGIAHSコーディネーターの榎本雅仁氏が「GIAHS :ERAHSの発展と共に」と題してそれぞれ行いました。

    これらの基調講演は3日間にわたる会議での東アジア諸国のGIAHSと国家農業遺産(NIAHS:Nationally Important Agricultural Heritage Systems)サイトの農業遺産システムに関する科学的研究と優良事例についての活発な議論の幕開けとなり、ERAHSメンバーは今後とも農業遺産システムの研究と保全に関してより緊密な協力を促進することを約束しました。

    今回の会議はERAHSが主催し、中国工学院農学部、福建省福州市、陝西省佳県県、J-GIAHSネットワーク会議(J-GIAHS)、UNU、韓国農村遺産協会(KRHA)が共催し、FAO、中華人民共和国農業部(MOA)、江蘇省興化市、中国科学院地理科学研究所天然資源研究所 (CAS-IGSNRR)、FAO/ GEF GIAHS中国事務所の後援により開催されました。また、参加者は興化市の「興化嵩上げ畑農業システム」も訪問しました。第2回ERAHS会議は2015年6月に日本の佐渡市で開催される予定です。

    国連大学はこれまで積極的に東アジア諸国間、特に日本、中国、韓国における農業遺産システムの研究とFAOの世界農業遺産( GIAHS )の保全に関する協力と交流を、UNU-IASの日本における独創的な農文化システムの総合的な評価手法の開発いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の研究プロジェクトの下で推進してきました。これらのプロジェクトを通じて、国連大学は2013年10月にERAHSの設立にも大きく貢献しました。ERAHSは、李文華教授と武内和彦教授が名誉会長を務め、日中韓の科学者や専門家などで構成されています。ERAHSは、東アジアにおけるGIAHSの保全のために科学的なサポートを提供し、毎年日中韓3カ国の間で持ち回りで開催されるERAHS会議を通じて情報や経験を共有することによって、FAO GIAHSイニシアティブの発展と東アジアにおける農業遺産システムの持続可能性に貢献することを目指しています。

    会議の最終報告書が近日中に作成される予定です。会議の議題とトピックの概要については、CAS-IGSNRRのサイト(中国語)を参照してください。本会議の詳細については、イヴォーン・ユー(UNU-IAS)までご連絡ください(yiu@unu.edu)。