2023年世界湿地の日記念シンポジウムを開催

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  • 2023年2月15日     オンライン

    2023年2月2日、国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は、2023年世界湿地の日を記念するシンポジウムをオンラインで共催しました。本シンポジウムは、湿地の保全と再生に向けた行動を加速させるため「今こそ湿地を再生する時(It’s time for wetland restoration)」をテーマに、生態系回復・グリーンインフラ・ユースの参画などに関する優良事例について議論しました。本シンポジウムは、日本国際湿地保全連合(WIJ)、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)、日本環境省の協力のもとで行われました。

    開会挨拶にて、UNU-IASの山口しのぶ所長は、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)などの統合的アプローチを例に挙げ、相互関連的な問題に対処するためには相乗効果(シナジー)をもたらす行動が重要であることを強調しました。また、湿地の再生は生物多様性や生態系のみならず、気候変動対策や防災、人々のウェルビーイングなど様々な分野に恩恵をもたらすとして、国連のアジェンダへの取り組みへのユースの積極的な参画を奨励しました。

    続いて、環境省自然環境局野生生物課の中澤圭一氏は、急速に失われつつある世界の湿地をとりまく状況、そして国内における湿地再生事業について紹介しました。さらに「昆明・モントリオール生物多様性枠組」に則した新たな生物多様性国家戦略案の改訂について語りました。

    国連環境計画(UNEP)アジア太平洋地域事務所の八代真紀子プログラムマネジメントオフィサーは、「国連生態系回復の10年」について概説し、本イニシアチブを通じてネットワーキングの機会や、取り組みを高めるリソースにアクセスする機会などを提供していると紹介しました。

    日本雁を保護する会の呉地正行会長は、ラムサール条約に登録されている蕪栗沼での取り組みについて述べ、湿地の再生は洪水を防ぐとともに持続可能な農業に資する自然を基盤とした解決策であることを説明しました。また、再生に向けた取り組みを成功に導くためには、多様なステークホルダーの間でビジョンを共有することが大切であると話しました。

    ユースラムサールジャパンのメンバーである熊本県立大学の佐藤琢磨氏は、ラムサール条約第13回締約国会議(COP13)および緑の流域治水プロジェクトにユースとして参加した経験を発表し、デジタルへの適応力としがらみに捉われずに考えられる力がユースの強みだと述べました。

    3つ目の発表では、SATOYAMAイニシアティブ国際パートナーシップ(IPSI)のメンバーでもある、コンサベーション・アライアンス・インターナショナル-ガーナのレイモンド・オワス-アチアウ自然資源マネージャーが、ガーナのソンゴー湿地における地域主体の湿地回復への取り組みについて紹介し、その際に使用された「相互主体間の回復アプローチ(IRA)」が多様なステークホルダーの協働を促し、効果的な解決策となったことを指摘しました。

    最後に、WIJの星野一昭会長は、国家レベルで効果的な政策計画を策定した上で私たち一人ひとりが一丸となって取り組みに参加することの重要性を強調し、湿地の再生のための取り組みを一層加速していくことを呼びかけてシンポジウムを締め括りました。