「能登の里海」公開セミナー、里海の役割りを再確認

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  • 2015年4月29日     石川県金沢市

    Photo: E. Yiu/UNU

    Photo: E. Yiu/UNU

    いしかわ・かなざわオペレーティングユニット(UNU-IAS OUIK)は、2015年3月24日金沢市にて、「能登の里海」公開セミナーを開催しました。能登半島において里海が果たす役割やその魅力を発信することを目的として開催されたこのセミナーには、漁業関係者をはじめ、県内外の専門家、行政職員、地域の方など、合わせて約60名が出席しました。

    能登島ダイビングリゾートの鎌村実氏は、「能登の里海」の水中映像を上映しながら、里海を生業の場として関わる人々の営みによって、海中の生態が健全に保たれていると解説しました。さらに、能登の「里山里海」については、UNU-IAS OUIK所長の渡辺綱男が、国連食糧農業機関の世界農業遺産(GIAHS)に認定されたことを紹介しました。

    また、「里海」のコンセプトを最初に提唱した九州大学名誉教の授柳哲雄氏は、基調講演の中で、里山ほど研究が蓄積されていない日本の里海研究に対して、今後より多くの関心が集まるように国際会議や学会誌等での英語での発信が不可欠だと提唱しました。

    一方で、国連大学上級副学長の武内和彦は、パネルディスカッションの中で、国連大学が社会生態生産ランドスケープとシースケープ(SEPLS)を考案した経緯を説明し、里山と里海は別の概念ではなく、その生態と社会経済活動との関係性は共通のものであることを理解したうえで研究を進めることが、高い生産性を創生するために不可欠だと補足しました。

    地元の漁業の継承の問題についての指摘もあがりました。石川県水産課長の岩本泰明氏が、石川県の漁業の現状と多様な伝統漁法について紹介すると、石川県漁業士会長の木戸信裕氏は「若者が若者を呼ぶ」として、若い世代にとって漁業が魅力的な職業であるためには彼らに主導権を与えるべきだと述べました。

    森の保全と上流域と下流域の連携に関する必要性も強調されました。木村功商店代表でカキ養殖を営む木村功氏で、栄養豊富で奇麗な川水はカキがよく育つ要因として挙げると、七尾湾活動実行委員会員兼能登島ダイビングリゾート代表の須原水紀氏は、「ダイビングを通して地元の漁船の点検のお手伝いや研究者の水中調査への協力等地域の漁業と里海の保全へ貢献ができる」と話しました。

    最後に、UNU-IAS OUIK研究員イヴォーン・ユーより、能登の海底はゴミが殆どないことから地域の方々が、海を大切にしている様子が伺えると評価し、能登の魅力をより多くの方に知ってもらうよう、UNU-IAS OUIKが実施する「能登の里海ムーブメント」について紹介をしました。今年度は、能登地域にてシリーズ講座(年間4回)の開催や、里海の研究や里海の発信イベントの協力を行っていきます。

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    本国際シンポジウムは、いしかわ・かなざわオペレーティング・ユニット(OUIK)の研究活動の一環として行われました。